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【安価】やる夫は誰かのために戦うようです【R-18】 第21回

1141 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:37:57 ID:3ClCV4gc0 [2/24]

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あれから、既に三日が経過した、と思う。
そのはずだ。

時間の感覚もあやふやになるくらい、やる夫は虚脱した日々を送っていた。
受け入れ時のメディカルチェック以降は、
食事と排泄以外のほとんどの時間を眠って過ごした。
水も気付いた時に、食事も一日に一度程度になっていた。
信じられるものを見つけて、憎むべきものを見極められてきたつもりで、
手の中にあったものが零れ落ちていった。

ルルーシュたちは無事だったらしいが、ラケルを始めとした多くの犠牲者が出た。
マーシフルが普段格納されていたドック部分は完膚なきまで破壊され、
少しずつ思い出で埋められつつあったやる夫の部屋も、今では瓦礫の中らしい。
葬儀も行われることもなく、彼らの命がこの世から失われたという
漠然とした情報が、やる夫の胸の中に刻み込まれるでもなく沈んでいた。

ブライドルの保有する中立施設に逃げ込んだやる夫となのはは、
ほとんど間に合わせでろくな整備もできないような格納庫にマーシフルを
入れるだけ入れて、今後を決めかねていた。

居住面などでもトウキョウのコロニーにあったものには遠く及ばず、
ほとんどベッドしかないような部屋を一時的に与えられ、
食堂もないのでほとんどレーションといって差し支えない配給食を
口にする日々だ。ストリートチルドレンの頃に比べれば間違いなく
ご馳走なのだが、なぜか味は感じなかった。

残ったのは己のネクストと、帰れる場所を失ったという事実だけ。
当たり前のように思っていた、自分の帰る場所。
なのはたちに貰った色々なものが置かれていた部屋。

かつて心のどこかで願っていた当たり前が、いとも容易く打ち壊されたということを、
狭い部屋とぬるい食事が如実に物語っていた。
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1142 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:38:19 ID:3ClCV4gc0 [3/24]

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      |\:.:.:\:|\ ゝl:.:.:|:.:.|/   ゝ'  \ |:./ レ′     ……ああ、やる夫君。
      |:.:.:.:.ヽ、ヽ:| `!:ヽ:|、|       / レ′
      |:.:.:.:.:.:.:.\/  ‘, \\    ― ´           短い間に随分やつれたね。
      |:.:.:.:.:.:.:.:. |   ヘ:.:.:.ヘ    /
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      |:.:.:.:.:.:|::\   ≧ュ、`ヽヽ
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成人男性が三日三晩ベッドの上で伸びていれば、
相応の問題も発生しようというものだ。たとえばそう、体臭である。
皮肉なことに、どれだけ世界が変わろうと、この身だけは変わらないのだ。

シャワールームでさっさと汗を流し、自室に戻ろうとした途中の廊下でなのはに会った。
人通りもほとんどない場所だったので、やる夫となのはは場所を移すでもなく、
その場で二人して立ち尽くしながら滔々と話し始めた。

やつれたと言われても、あまり実感はない。
この三日、鏡を見ることもなければ見たいとも思わなかったからだ。

「そういうなのはさんこそ、随分きつそうに見えますお」

「……そうだね、今回ばかりは、さすがに」

なのはの眼には疲労が色濃く表れていた。
声には張りがなく、元々薄化粧だったメイクも更に手が抜かれている。
まるで生きるエネルギーが蒸発してしまったかのように、視線は力なく虚空に向いていた。

「その様子だと、ニュースも見てないんでしょ?
……企業連が桜花重工の解体を発表したの。
テロリストへの支援が発覚……って口実で」
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1143 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:38:30 ID:3ClCV4gc0 [4/24]

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     / ─    ─ \
   /   (●)  (●)  \     桜花が解体……?
   |      (__人__)     |
    \    ` ⌒´    ,/     政治のことはよく分からないけど、潰れるってことですかお。
    /⌒ヽ   ー‐    ィヽ
   /      ,⊆ニ_ヽ、  |      じゃあ、はやてさんとかはどうなるんですかお?
  /    / r─--⊃、  |
  | ヽ,.イ   `二ニニうヽ. |      親会社のオルデンブルクにでも?





                         ,――==―
               , -‐…‐-=-...ゝ/:./__´_
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:.:__:.:.:.:\
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.ヽヽ:.\
        //:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.l:.:|:.ヽヽヽヽ:.:ヽ\:.:.ヽ\ヽ
       i./:.:.:.:.:.l:.:|:.:||:./|:.ハ:.:i、i、i:.:i:.:l:.i:.:.i:.:.:.:i |:.i
       ||:.|:.:|:./圦斥=≦ .|≧云トl:.:|:.|:|:.:.|丶:| .|
       ヘ|:.|:.:|:.|/r爪:个  .´{:::。:メ,|/:.|:.:|:.:| .i:.:|
       ヽヽ:.ヽゝう:::::}    b_::7〃l/:./|:.:| |/
            小、ミゝ…´   `¨‐‐//;,l/|:.|/:|/       ……ふっ。
          |:.:ゝ       `  //:.|:.:.:|/::.|
          |:.:.|ヽ、  -‐‐  ,∠:.:.|:.:.::|:.:.:|        解体なんて字面だけ、実際は粛清だよ。
             |:.:|. |> 、 _ イ  |:.:|:.:.:.:.!:.:.|
          |:.|/|――, ― |、 |/:.:.:.:.:|:.:.:!        昨日、アヴィアコルのランク2が桜花重工本社を襲撃、
        ,、r´:|:::| ヘ  /><l l ヽ|`ヽ:.:.:|:.:.|
     ,、r::´::::::::::::::| ヘ、/ 只ヽ|  ヽ:::::::`ヽ:.!        ネクスト・八咫烏を含む桜花の戦力のほとんどを殲滅したってさ。
  ,、r::´:::::::::::::::::::::::::::|  .ヘ /||ヽ |  ヽ:::::::::::::::::`ヽ
 |:::ヽ::::::::::::::::::::::::::r L__lヽ‐‐‐yヽ/ `ヽ、:::::::/|
 |:::::::::\:::::::,、r ´   / ヘ:::::::::|  `<   `ヽ/::::|
 |rヽヽ:::::/     .<   丶:|   ./     |::::|}

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なのはは皮肉気に口を歪ませると、淡々と桜花重工が壊滅した事実を述べた。
一瞬、その言葉が意味することが伝わってこなかった。
正確には言葉の意味は分かるが、理解するのに精神が追い付かなかった。

「殲滅って、どういうことですか」

「そのままの意味。死傷者数もろくに発表されてないし、はやてちゃんは生死不明。
といっても、死体が確認できなかっただけだから……」

視界が歪み、足から力が抜けていく。
咄嗟に壁に手を突いて体を支え、なのはを見上げた。

「きっと、オルデンブルクグループが気に入らないIGIOあたりが仕組んだんだろうね。
こればっかりは、私にもどうしようもない……何もできない」

その眼に感情の色はなく、まるで精巧な硝子細工のようにやる夫を映していた。
よく見れば、唇には噛んだ痕のようなものがくっきりと残っている。
掌には自身の爪が食い込んだのか、赤黒い線が入っていた。

「……外の空気を吸ってきます。このままあの部屋に戻ったら、おかしくなりそうだ」

「それがいいと思う。いってらっしゃい」

なのはに背を向け、覚束ない足取りでエレベーターに向かう。
不思議なことに、涙一つ流れやしない。
きっと、人間は一度に大量の辛い情報が流れてくると、感情が停止するのだ。
丁度、自分が両親を失った時のように。
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1144 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:38:40 ID:3ClCV4gc0 [5/24]

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エレベーターに乗り込むと叩くようにしてボタンを押し、屋上へと上がった。
幸い、この場所はコジマ汚染もほとんどなく、こうして生身のまま外に出られる。
今や地球上の半分近くはコジマに汚染され、人の生きられない場所となりつつある。

落下防止の鉄柵以外何もないような場所で、コンクリートの床を踏みしめながら
夜空の下へと歩を進める。皮肉にも、消えていった文明の灯にとって代わるように、
藍色のカーテンが引かれた空には煌めく星が散りばめられていた。

潮の香りを含んだ風が頬を撫でる。初めて嗅ぐ匂いだったが、関心を示す気力もない。
施設は海上に建設されており、至る所から波の音が聞こえてくる。
海自体は任務時にマーシフルのコックピットから見下ろしていたが、
こうして生身で見るのは初めてだった。

少し歩いて立ち止まり、月を見上げる。
若干の雲に覆われているにもかかわらず、煌々と金色の光を降らせていた。
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1145 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:38:59 ID:3ClCV4gc0 [6/24]

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                                                       /r' \ヽヾ\
                                                        ∥′  \>、>、>
                                                     レ     ヽ>ノ

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
すると、暗い空の彼方に赤黒い雷光が奔るのが見えた気がした。
見間違いかと思って目を凝らすと、雷光は確かに、勢いと大きさを増していた。

いや、大きくなっているのではなく、近づいてきているのだ。

やがて目視できる距離まで入ったその鉄の巨躯は、
夜闇に溶けるような藍色のネクストだった。
忘れるはずもない。ランク4、ロストワード。アリスのネクストだ。

殺戮の象徴であるネクストが向かってきているにもかかわらず、
不思議と恐怖はなかった。鉄柵に近づき、ロストワードを出迎えるように見つめる。

空飛ぶ異形とでも形容すべきその姿の周りに、緑色の光はない。
PAは切っているのだろう。施設に警報が鳴り響かないところからして、
敵対信号も発していないようだ。

海面を割りながら飛行するロストワードは、施設が近づいてくると減速し、
やがて夜空を覆いつくすように施設の前で停止した。
風圧に後ずさりさせられ、尻餅を突きそうになるが、やがて風は止んだ。

下腹部の装甲が花を開くように展開されると、
そこからワイヤーで編まれた縄梯子が垂らされた。
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1146 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:39:13 ID:3ClCV4gc0 [7/24]

__>.::.::.::.::.::.:..\:.\-―一1::ト、::<___,,.>‐  二、ヽ
ヽ::{_x<ノ⌒^⌒ヽ::.\___|::|,/\:.ヽー---―<\ _\
::∠ノ ̄         ー‐―┬く  |::ト、`二二ニニ二´_  ̄
´   丶  `  、     |::| \|::| \:.\\:\   \ ̄`
      \    \     ヾ ー┴|、   \:.\丶`ニニ二二
  ヽ    \   ヽ\  \  ̄ ̄  \   \:.\    /
   \      \  '. \  \      ヽ  \:.\  /.::.::.:
    \   /\ \l ,,ィ笙z \      ゙,   ヽ :.∨.::.::.::.
  、    \′  ヽ、V㌻ニミメ、lハ     !     l ∨.::.::.::.::.
  \  \|\   |i7、ゞ'ノ バ ! ',    |    |/.::.::.::.::.::.:
     \  |\` ¬ |l!^゙=イ  |l  | | |   /.::.::.::.::.::.::.:
ヽ     ヽ\|  ` ー‐ヾ     l!  |  |! |l   ′::.::.::.::.::.::.
 \     \` ー‐一        l ∥ | |   |::.::.::.::.::.::.::.::
   \    \            | |||| |::.::.::.::.::.::.::.::       久しぶり、やる夫。
    丶、__ \          | ハ|  l  |::.::.::.::.::.::.::.::
゙\    \>< ̄ ,,_          ,  l  | |::.::.::.::.::.::.::.::       
  \  /` ―-_,,《{ゞヘ      ノ!    |j::.::.::.::.::.::.::.::.
  、 \ヽ=ニ二 ㍉ご¨} -     '‐' =     〈::.::.::.::.::.::.::.::.:
    \ ` <二 `アミ         _   -一个 、::.::.::.::.::.::.
 、    \ ー―一 ヽ ヽ` ー‐¬  ̄     |  ト、::.::.::.::
ヽ \ト _ ー一   |   l   |       |  |イ\::.::
  \ \|  ̄ヽ   l   |    |l         |  | |  卜、
   ト- `ニ=-|   | |    | |      /l  |'::〉、∨
   |  | l    |   |l |     | !     /.:/ヘ ∨ \
   |  | |    |   || |   l |   |::l   ∧ '.
   |  | |   |    || |    !  l  _」::L.ノ::∧ '、
    |  ||  |  ハ|  ′ /..::::/.::|-‐'´  \ヽ /.:
.   |  |.|  ! /  }ノ  / / ⌒>'.::/        \⌒7
  |  | |     l /    /    /..:::∧        /

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コックピットから現れたのは、ネクスト搭乗用のスーツに身を包んだアリスだった。
後ろの方で結っていた髪のピンを外し、どこからかいつもの黒いドレスを
引っ張り出してきて器用に着始めた。
別段スーツのままでもいいだろうに。それとも、何か気持ちの問題なのだろうか。

着替え終わったアリスは縄梯子を伝って屋上まで降り立つと、
呆然と立ち尽くすやる夫まで歩み寄ってきた。

ドレスの襟元からスーツを覗かせながら、小さく微笑むその姿に、
やる夫は笑うことも手を挙げることも、言葉を発することもできなかった。

「色々聞いたわ。世情は御覧の通り、表面上は押しなべて事もなし、よ。
企業連のニュースでは、あなたのことを英雄みたいに祀り上げてた。
独立傭兵でありながら二度もコロニーをテロリズムから守ったリンクス。
企業の統治下世界を守る英雄だって」
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1147 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:39:24 ID:3ClCV4gc0 [8/24]

   / ̄ ̄ ̄\
 /        \    ……英雄、か。
/    ─   ─ ヽ
|    (●)  (●) |   言われてみて初めて分かったけど……なにも嬉しくないんだな、そういうのって。
\  ∩(__人/777/
/  (丶_//// \

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
自分の帰る場所も、恩人も失った自分が、英雄。
笑わせてくれる。そんなものに何の意味があるというのだ。

やる夫は顔を歪めて、自らを嘲笑うようにしながら地面へと視線を落とした。
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1148 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:39:43 ID:3ClCV4gc0 [9/24]

               ____
             /      \
           / ─    ─ \     結局、やる夫は何もできなかった。
          /   (●)  (●)  \
            |      (__人__)     |    残ったのは、この身と機体くらい。
          \     `⌒´    ,/
          /     ー‐    \     見ず知らずの人たちを助けて、知ってる人たちが死んで……





      ___
     /::::::::::::::: \      やる夫は……誰も守れていない。助けられていない。
    /::::::::::::::::::::::::::::\
  /::::::::::::::::::::::::::::::   \   ただ……当たられた力で、人を殺しただけだったんだ。
. |:::::::::::::::::::::::::::(ー) .  |
  \    (__人__) .  /   全てが見えてるつもりで、何も見えていなくて、気付けば全部零れ落ちてた。

1149 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:39:58 ID:3ClCV4gc0 [10/24]

                    -‐,コf7{{辷fリノヘ,
                  /  __{仏:'/:`¨:^三≧,
                   /:7://:::::::_:_彡'^¨⌒丶
                   /    }:厶:/::∠}厂     \ \
               /  ____」水くフノ^´  .′    丶  . 、
                 /  /::/ 7::/∧:}   /, //! .     . }  l i
             /   \V介{:し:ノ |十-Li     j/ }  ハ|
               /    // |:トf    |i_」土z,\ ァィ/ / }
           //   // i |:| 丶  个i、 炒`  '仞/}}j/
  ‐= _     /    〈/   l |:|   `ト .   \    〉i{ {{       ……ねえ、やる夫。
     ̄≧=-く 、         八l」  l八 `¨⌒ _, イ八}}=-‐
 ___,≧ニニニ≧x )\ // ヘ  个ヘL_   ´/厶'′       私がここに来たのは、あなたを迎えるため。
二ニニニニニニニニニニ≧x彡'ヘ   「¨::7了f千{≦=―-
   _厶三ニニニニニ>=≦ヘ乙1  |:::/r介ハi| トく,⌒´        ……オルデンブルクは、桜花をIGIOに売った。
_ -=ニ=‐ァ=ニニニニ/::::::::::::::::::\)  l⌒レfじヘ |i:::::マ⌒ー ァ
ニ=-_厂/ニニニニ/ ::::::::::::::::::::::::::::ヽ, |  〈∧〉}八:::::\^´       企業連への隷従の意を示すための贄にした。
// _,厶イ/ニ>'::::::::::::::::::::::::::::::::::::Vハ八/丁「/f刈〉::::::::〉
′_彡 7/八lト::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Vヘ, 〉/ /`辷八::::::/         けれど、企業連は……IGIOグループは、
〃    / j八::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉:::\ {  {  }}:::{
  /       介x:::::::::::::::::::::::::::::::;/:::::::::::::マハ_ } {じく\        約束していた賠償も補償も拒否した。
  :      //  'ヘ:::__:::::::::::;厂:::::::::::::::::::::::\廴} ノ乂)) :.
  i/   /  八//〃介tx:/^、:::::::::::::::::::::::::::::::::⌒iリ:::「´  li
  |     :  { }/ ,:::{乂_)リハハx::::::::::::::::::::::::::::/仆i:ト  八,
  |\   ト . { / /::////:/   }ハ〉:::::::::::::::::::::く乂ノリ八ハ/   \
  |  丶 | \! /::〈/〈/:/    ,ノ::::::::::::::::::::::::::::::::{:{:::::::〉、     }





          仄いrく艾艾艾艾癶、
         r巛Uj〉j〉j〉::::::::::::::::::::辷う、   、
.        nrnrnrnrnrnrn:::::::::::::::::::辷う、   \
     /乂乂乂乂乂乂乂nrn:::::::::::::::辷う、   ヽ
   / ̄          乂乂nrn::::::::::辷う、
             \        乂乂n::::::::::rう)、
/               :.\   \    乂n:::::::::rう)     ′
  i      : :   ::::::. ヽ  :.\     乂辷辷く     ′
  ::|:.  ¦  :...:|....: i :::|   _}L.:.      艾艾艾\
  ::|:: |:::::l|:.. . .::::::|:: 斗r七'     |l ¦   Y⌒Y^  \   |      直に戦争が始まるわ。ネクスト戦役に匹敵する戦争が。
  ::|:: |:: 八:::::::::::::|l::l::| 〕斗ぅ弌7. |l  |:   V⌒ト、 \\ |
: |:八:. 、:::: ヽ :::::::八乂{ア乂`ーク  |l  ハ:.   |   |l \ \\      オルデンブルクに着きなさい、やる夫。
: |::::: \\⌒\/     ''¨゛´   八Λ|:: | |:) 八.   \ |
八::::::::::|\ 托笊!           ./ .:/ ..:|:: ハ! ,.:代_____\__    マーシフルのリンクスとして、私と一緒に戦うの。
:. \ : |\\`ー1          //〉..:/|. / 「 ::|l   |.    )    )
\  丿:::::ヽヽ込、         //  ′/  :|l   |   (
  \   乂__込、    _ ー      ./  /   |l   ト、
.    (  |:l \ \         ./  /:/... 八|:  |:::\
     \|:l:: |:ハ  ヽ     イ..::/  /:/   /|:: |:  |:::::::::\
       |:l:: |:: |: |: 个ヲ 厂 ハ/  厶仏:::/^|:: | . ├――=ミ
       |:l:: |:: |: |: | ノ/: 厂\彡く/|..../: : |:: |:  |
       |:l:: |:: |: |: |}/  厂 ̄ ,ィ__八/: : : |:: |:  |

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アリスの粛々した声は、確かに真実を語っているように聞こえた。
これから大規模な企業間戦争が起こる。
だが、それがどうしたというのだ。

最早、自分が何を信じて戦っていたのかさえ定かではない。
どれだけ大きな戦闘が起きようと、知ったことか。
自分が幾ら戦ったところで、起こるのは殺戮だけだ。
誰も救われない。誰も笑顔にならない。他人どころか、自分すらも。

やる夫は再びマーシフルに乗ろうとする意思を失いつつあった。

「ごめん、アリス。もう、何も分からないんだ。
分かるのは、戦ったところで、やる夫の傍には誰も残らないってこと。
そして……やる夫がただの人殺しだってこと」
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1150 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:40:10 ID:3ClCV4gc0 [11/24]

                / // 、ヽ′   ,/     _ノ゙/ // ノ  / ハ    !::::l l:::::l l  |:::::l/
             / / l  | !    ,/     / ,/ / /  / / /    ヽ::ゝ !::::! l  l:::/
              | l! |  | ! |  i||    / /,,,,,,//  // /    /ヽ\:::::/  l  |::l
.              リ  |  l ll i  l ! /  巛≠≠7 ∠― /      l l  |::::|   l  l::!
                '  ヽ ! ll l  ! |/l    l! } , ′   /     , ' l !  |::::|   l  |::l
                  l! ヽヽ  lノ    /liノr'     /   /l  ! |  |::::|   l  |::l
                    ∨     ' ̄     /   _, -´ |   ! l  |::::|   l  |::l
                    ,  ´             ∠ -  ̄   |  /  l  |::::|   l  |::l      そうかもね。
                    ヽ                        l  /  ,'  |::::|   l  l::l
                    l                      l  l |  |::::|   l `′     あなたが戦い続ける限り、
                     ヽ, ‐-                  l  l     /`´   l
                   ! 、                 l /    /      l        あなたの周囲から人は消える。
                   /、                /./    / l     l
                    i  }                   /./    ∧  |     l        トウキョウの施設の人々のように。
.      、_            /  ヽ _           /./    / ,.l、 l     l
        `'ミニニ=,、    /  ,    ,/ ー - 、    /./    /‐'´::.::.ヽ..l     l
          `三三三三三三l  /    ,/      !   //    /::.::.::.::.::.:.::.::ヽ..    l
    三三三三三三三三三!   l   ,/      /l:.::.::.:.//    /::.::.::.::.::.::.::.::ィノ〈ヽ..  l
   =ニミ三三三三二ニニ!   l   /三二ニニ//::.::.::.//   /::.::.::.::.::.::.::.::.:ノ} ゝ.::.ヽ_!_
 .==ニ二三三三三三三三|   l  /三二ニミ/::./ /::.:://  /::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:|r-r、::.::.::.::.::.
 ミ三三三三三三三二二ニl  l  /ミ三三三〈::.::.〈 /::.:/  / i::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:ィノ 〈/::.::.::.::.::.::.
=ニ三三三三三三/::.::.::.::.::.l  l /::.::.::.::.::.::.::.::ゞ::.:ゝ::./ /   l::.::.::.::.::.::.::.::::.::.ノ}  ゝ::.::.::.::.::.::





            }::::::::::::::广手エ广エ广エ广エ广心.: : :.    ゚。
          /((ニ){;イ攵ノ攵ノ攵ノ攵r癶、攵ノ}㍉.: : :.   ',
.          /刄ヲ弍彡'´丁¨}! ̄¨ゞ彡::::㍉}手ミ__}ノ.: : :.   ∧
.          }リソ/.    | |  |   ', 刄::::::::攵rミ{{≧====┐ :;
.          /イ | |.    | |  | i.  ,: :', 攵rミ:::::::::≧=== リ ∧
.           {リ | |:    | |  | ||.  ,: ∨: : ≫[>::::::::}===ミ.:. .:.∧
        /   | |:    | |  | リ;<  ∨.: : : :.',',ノ::/!::::::::\__}!   ,
.         '.   | |!     | |  i/! ヽ八} ',: : :リ:::::{ノリハト、>┘\ \
          {   | |!     | |/  ,斗芸、 : ∧: : \イ: : || \ \: \ \         でも、私は違うわ。
        :    | |i!.:.. j!.:.| | γ{:;仞゚}ツ∨ハ. |.: : : :.》: : :{{  \ \ \. `
        ‘   | |i!.:..ハ.:.:| |  {! 乂;,イ  リ }!ト、 /': : :.乂_.  }  }ト,  \ \
        从.  |! i!.:斗Ⅵ八.     ′ /  ! !ハ/: : :.   }}  ヽト、 ̄.   \ \
         八.:.人. Ⅵ:ヽ ム、 ヽ    ノ   ! ! /{::\.: :  八 \ \\   /\ \
       /i . Ⅵ ヽ j`《刄         | | |::!\::\: : : }};   }  } }≧イ:::::::::::≧='
     /  |! . ∨ヽ \:ハ'¨ヽ '   __    |! レ'_:\___乂:::::ハ  ,《:::::::::::::::::::::::::
    イ   乂_ノ }リ` ー}/:}\   '      |! }::::::::::::ヽ厂´::::::::::}   }!::::::::::::::::::::::::
.          }X{ /   イ ,ヘ} > .        ! !イj:::::::::::::::::::::::::::::::::/ :i j!:::::::::::::::::::::::::
        / }リ{    / /ル    `  - イ| |八:::::::::::::::::::::::::::. /  リ /:::::::::::::::::::::::::::
.       /   レ:{  / /       .ノ 厂:::| |彡':::::::::::::::::::::::/イ/':::::::::::::::::::::::::::::::
.       {!   八/ イ       / /:::::::::| |攵r癶:::-‐=≦  / /:::::::::::::::::::::::::::::::::::

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
俯いていると、頬に少し冷たい掌が触れた。
顔を上げ、アリスの顔を見つめる。

「私は違う。私は絶対に、あなたの傍からいなくなったりしない。
私がいる限り、絶対にあなたを殺させやしない。
あなたがいる限り、私は絶対に生きてあなたの傍に戻る。
約束するわ」

深紅の瞳は静かに、けれど確かに、熱く燃えていた。
赤く揺らめく、決意の色に。

「今日、あなたのところに来たのは私の独断よ。上の指示ではないわ。
これから大規模な戦争が起こると知ったとき……
私は、あなたに傍にいてほしいと思った。あなたの傍にいてあげたいと思った。
私を殺しの人形ではなく、ただの女だと言ってくれた
他ならぬあなたの傍で戦いたいって……そう思ったのよ」
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1151 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:40:37 ID:3ClCV4gc0 [12/24]

                   ,、rm__rv竺vヘュrヘ- 、
                 {辷彡'こ三三三三≧ヘV,ニニヽ
                     /彡クー^ー'^ー^¬卞〈\ヽ∨
               / 乃了   `ヽ  ヽ∨∧ヽ \`、
                  //_/7 ′     ハ `、〈〈_ノ ノ   ヽヽ
           r,ニY/」 ′〃   , ' l| ト、 l l ̄l「`、   | ハ
           __〉イ〃 ,  /, l   / ,イ!} |リ 八 ヽ |ハ
           〈 rク// ,′ ,'/l∥ ,' /厶‐十ナ/}小、ヽ ∨/  、
        , -ァ7イ {  l   |l ハ ト、 { l /ィ乏f千ァ l |ヽ}_ノ   、、 `、
        // 〃l ハ  、 レイ下丶、j′'ヾ゙ジ  // rヘ川 ¦ ヽ ヽ
.     //   {l { い、、\V,ィf赤       //  ,ィ|l |  ト、 \
     {_/    ヾ \/ ヽ\ヾ`ー'′       { !  仆//  ,′ | ヽ  ヽ      実を言うとね、私も戦う理由なんてなかったの。
             ノ{ {  八_〉、   ` , - ァ  ゝ, ' V ハl /   ハ }   \
           , -‐'´/ハ 、 { |lヽ、      ∠ニ-V リ / /  ∨    ヽ   ただ、この生き方しか知らなかっただけ。
  , -‐'´  ̄   -‐ニ|l 7,ヘヽ \l_  「≧ァr<::..::..::..::..∨ /,...┴、/ト、     l
// '′, '´ ̄.:∧:.ヽ//  ヽ\j二 /// 7j「ヽ\::..::/ , '´::..::..::..::ヽj ヽ    |   企業の大人の言われるままにネクストに乗るだけの命。
 , '´ , / ___ ,' ハ/ , ′ }ノ/ ,..-ヘ \_/∧V /r┘/::..::..::..::..::..::..`、∥   l
/ , ///   __.::|||::./ / ///::..::_>ー'′∨厂 /::.::.::..::..::..::..::..::..::..∨!    |   でも……理由ができたのよ。
 ///厶-‐ '´  ::|∥|:: /, / ̄::..:/ ::rv冖vク/ |レ'〈::ー::‐::-::..::..::..::..::..::..::} |   !
二 ̄  -―  ::V リ:: / {^ヽ::.//::rく v佗く//  人:: ̄´::.::.::.::.::.::.::..::..::/ !   |   たとえ殺しのために作られたとしても。
―‐  ̄  -―‐ ::∨::.彡rベ::..::.〈〈_>ヘヒ彡'´ /r_/\::..::..::..::..::..::..::./} l     !
____rー― 「ト、― '´/{r冖-、::..:`7〉// / / _「7::..::..〈::.,ニ==rr< /  j     }    私は、この命をあなたとの日々のために使いたい。
、 ∠ニ/ ̄ {| lハ、_厶≠-ミ、\/}   ,′,' ∧ V/::..::..::/〈__//「ヽV   ,′   ,′
{ヽ、\__ゝ_/Y^rr-一'  人  \r1 ハ !_「/::..::..::..:/:>ァ‐'´::ハ∨/  ′   /     あなたと一緒に笑える明日のために、使いたい。
ヽ、_二ニ=― {/ / / } ―¬个、ヽ、 ヽ\__〉∨::..::..::..::.:://::..::.::/ 「「   /     イ
=====ニ彳`丶、_」V  rく   ヽ/ \ヽフヾ==ァ::..:/_/::..::..::..:/   !l| /   /|
   ,..-‐く_〈     し'   〉 \`丶に     レ1 ∨ニ〈::..::..::..::..:/ /j l / ,ィ   !

1152 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:40:51 ID:3ClCV4gc0 [13/24]

      /    /   |   |        | | | |   | | | 〈:::〈    |::::|
.     /    /  |   | l        |  | | |   | | | l\\____丿 ノ
    /     ′  |   | |        |  | | |   l l| |  ヽニニイ
.    ′l       | || |        / | ノ 厶|-/ 十| ┼- 、// |
   l l|    l     |  |||     / .|イ´ / / ― トL|  //  l|
    | l |  l |     |  |||    l ′ ノ/  //___l/l |  l:::|   l|
    | | |  | |     |  || >、  | | /    彡===キ≦ |:::|  '|
    | | |  | |     |  |/ へ\ | l            |l|  |:::| / |      この感情がどう呼ばれているのか、
    | l∧  ||  |  |、/| l/   __             |||  \〉  |
   ヽ  \||  |  | ヽ〈   彡'" ̄            l||  /|   |       まだ分からないけれど……
   |::::|\|::l├ヘ、 、l  \ 〃                ||  ' |
   |::::|  レ\ | \\   ∧     ヽ            l |   | | /        それが分かるときまで、
   |::::|   | |l | ` \ トヘ          _,. ‐    ノ八  | |./ 
   |::::|   | | l|   |l| \      - ´        ヽ| |′         私の傍にいてくれないかしら。
   └┘   | |∧l   |||    ト                   二|
         八 | ヽ  ||l    |  |>  .     _  ´ //..::.:|           
          \  \ |リ    |  |     `T爪_//..::.::.::.:|
               \    |  |      |>〔]‐< ::.::.::.::.:/
                   ノ  |       /イ/^l ト、\::.::./

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
月明かりがロストワードの背後からやる夫たちへと差し込み、
彼女の笑顔を柔らかく照らした。

ブライドルの地下で見た偽りの月ではなく、本物の月光を浴びた
彼女の表情は至極穏やかなものだった。

「気にすることはないわ。私の手だって、汚れてる。
血濡れたあなたの手を取ることなんて平気よ。
だからもう、そんなに悲しそうな顔はやめてちょうだい。
私、あなたの笑顔が見たいわ」

言われて初めて、自分の頬が濡れているのが分かった。
目尻から落ちた雫が、頬を伝って彼女の手へと流れる。

途端に息が詰まり、肩を震わせながら嗚咽する。

そうだ、なんてことはなかったのだ。
自分はきっと、この言葉を誰かにかけてほしくて、ずっと生きてきたのだ。
死ぬこともできずに、生きてきたのだ。
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1153 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:41:01 ID:3ClCV4gc0 [14/24]

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                         └──────┘


                           ┌───┐
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                           │::::::::::::::::│
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                             ┌─┐
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                             └─┘


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                               └┘


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                               ・

1154 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:41:18 ID:3ClCV4gc0 [15/24]

          / ̄ ̄ ̄\
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       /   (●)  (●) \|l(^)
       |     (__人__)   l(_ )
       \     ` ⌒´   /⊂)
       /             ヽ ノ

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あの後、アリスは「管理者とも話はつけてあるし、私も一部屋借りて寝るとするわ。
夜も遅いし、今日のところはあなたも部屋の戻りなさい。答えは朝でいいわ。
あと、鼻水拭いて」と告げて、別の部屋に泊まりに行った。

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を袖で拭いながら自室に戻り、
やっとの思いでベッドにたどり着いたところでPDAが震え出した。

知らない番号が画面に表示されている。
何だろうかと出てみると、相応の年齢を伺わせる男の声が聞こえてきた。
落ち着きと自信に満ちた、低い壮年と老年の間の声だった。

「電話にて失礼。
お初にお目にかかるね、私はIGIO管理部門顧問のモリアーティという者だ。
今回は折り入ってお願いがあって、こうして連絡を取らせてもらった」

モリアーティという名はどこかで聞いたことがある気がする。
確か、ブライドルランクの名簿に載っていたはずだ。ランク8だっただろうか。
そんな男が何の用か、それは聞くまでもないだろう。

アリスの話から、内容は大体察することができた。

「こちとら家が焼かれて大変なんですお、またにしてくれますか」
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1155 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:41:42 ID:3ClCV4gc0 [16/24]

     ____
   /_ノ  ヽ、_\
  /( ─)  (─)\
/::::::⌒/)/) ⌒::::: \
|   // /      |
\ | /  二二)    /
/ i   r‐一'     \

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「まあそう言わないでくれたまえよ。君にとっても悪い話ではない。
今回は、平たく言えば勧誘だ。IGIOに来ないか、君。
もちろん、住まいなどは保証する。マーシフルもこちらの開発部のほうで
しっかりと整備させてもらおう。新型パーツも斡旋できる。
ブライドルランクとて例外ではない。十台は堅いだろうね」

「どうでもいいです。やる夫は……オルデンブルクに着きます」

考えるまでもない。どんな豪華な住居も、ご馳走も。名誉も金も、地位も。
やる夫にとっては何の意味もなかった。
彼女がいなければ、何も意味がないのだ。

「……ランク4に絆されたか。聞いてはいたが、まさかこれほどとは。
人形が人間の睦言を真似るとは、全く喜劇だね」

「人形かどうかは、自分で決める。あんたらが決めることじゃない」

PDAを耳から離し、通話を切る。
今はもう、迷いは消え去っていた。答えは、決まっていた。
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1156 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:41:53 ID:3ClCV4gc0 [17/24]

                         ┌──────┐
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1157 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:42:04 ID:3ClCV4gc0 [18/24]

                 ∨∧/「 ̄「 「` 、         。s≦/ニニニ=-/ニ=-`Y     。s≦>''~ム
                  ,∨∧l-=∧∧ ∨/ jL   ./ }>''~|lニニニ=-/ニニ=-/ 。s≦ニ>''~ {^∨ ∧
                    / ,x∨∧-=ニ\\」l jl[L  / /.: : : :.|lニニ=-/ニニニ=∧ニ>''~{^∨ ∧ ∨ ∧
              / /  .∨∧-=ニr‐-ミj{ア竺ニL/.: : : :.r'ニニ=-/ニ=-,>∧ ∨^∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
               / /    /V/{「\=\ ノ7 =-/ ̄{: : :.人-r'⌒寸"~  /=-゚, ∨/∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
          /[/   /_,ノニr―┴‐く/ニ=/   ´L ィ>''~\=-乂l⌒iニ=-} }゚, `  ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
          / /   /  )/^ヽ \ニ=-〈ニニ=-{   /廴ノ{     `寸ノ=-lニ=-} }'ム `  ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
.        /[/   /|_/iニ/ニ}L\ニ=\ニ=廴/ム^∨∧       〈ニニ=,ニニ=, , ∧ ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
      / /   / / __,xlレ'ニ/ Y´ {L ィi{i^辷/∨∧ ∨∧     {`,ニ=`、ニ/ /∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
    lL/   / / / ̄}[L/-= ノ  ~厄≧=‐〈  ∨∧ ∨∧    {=iニ=-\'゙  ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
         /[/ , -= //-=-r'^  _/ニニ=-> ァ  ∨∧ ∨∧     \二ニ=-|l___ ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧ ∨
.      / /   /-=, ' ̄\_ ノ_「`/ ̄'>''~ /{__,厂\ム \{       lニ=-/ニ=L ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧ ∨
       lL/   ./-=/-=ニ二ア゚7=i|/ニ/}ニ=/_r く ̄\=-\       L ィ^ニニノ⌒i. ∨ ∧ ∨ ∧ ∨ ∧
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         ]l-=/-=ニニi/l : : l-=l|ニ/ {/   ,ニ=-}: : : :\」}=l     i{ニ=-/ : : : : : /     ∨ ∧ ∨ ∧. \
         ]lニj{-=ニ二ノ ム : :l-=lL/ニ}   /ニ=-,: :_ イ^、\」   /l{ニ=/ : : : : : /       ∨ ∧. \ 」
         ]レ'⌒L/ ̄∨ム.」-==|ニ=,ー-‐〈ニ=-/´ニニ=-} ∨   i-=-/ : : : : : /       \ 」
         〈 l!i-=ニニ∨ム-=./|ニ/゚    }\二二ニ=‐∧ ∨   lニ/ : : : : : /
            lLノ┘!-=ニ二∨ifr┴L/Vムー-‐\ニニ=-厂 ̄}\}   j∨.: : : : :.,
             i-=ニニニ厂乂_,ノ  Vム     \.-/ニ=-7: : },  /´`{ : : : /
               八-=二/-=ニニ}`   Vム    ^i{ニ=-〈: : / ∨ /} L ィ^
              ⌒ヽ/-=ニ二〈ニ〉  Vム    j{ニ=-/:: '=-└' / /
              〈-=ニニニ二∨    V \_/ ∧=-L/ニニ=-}└'
              }-=ニニニ/     \_/  \{___,∧
                  , '-=ニニ/              ``'≪¨ニ=-、
               /-==ニ/                   \ニ=-\
                ,'-=ニア゚                        \ニ=-`、
          /{___/ヽ                            `、ニ=-`r┐
         / /-ニ廴ノ                            〈`、ニ=乂l
         iL{-=ニニ/                          V゚,ニ=-\
       _Y⌒ヽ-ニニ/\                               ~}二ニ=‐∨
.     /ニ乂_,,ノ辷彡ー┘                          }ニニニ=-}_
     ー一''" /-=∨                             人ニニ=-ノ^{\
.          \_/                                     ≧(⌒)k、ノニ=\
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
夜の藍色の機体が朝焼けに包まれ、静かに佇んでいた。
アリスから「そろそろ戻るから」と連絡が入ったので、慌てて屋上に出てきたのだ。
早朝の寒さも気に留めず、やる夫はエレベーターから躍り出た。

ドレス姿のアリスが鉄柵に背を預けながら、こちらを見て小さく手を振ってきた。
背後のロストワードは、さながら彼女を守る巨大な鉄の鎧のようだ。
大きく広がった背部の大型ジェネレーターやアンカーユニットは翼のようでもある。

息を弾ませながら駆け寄り、アリスと向き合う。

「答えは決まったかしら」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

1158 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:42:19 ID:3ClCV4gc0 [19/24]

..     ____
    / ―  -\
..  /  (●)  (●)        やる夫は、オルデンブルクに着く。
 /     (__人__) \
 |       ` ⌒´   |       マーシフルに乗って、君と一緒に戦う。
. \           /
.  ノ         \         君の言葉を聞いて、あの後一晩考えて……分かったんだ。
/´            ヽ





   / ̄ ̄ ̄\         未来の選択肢は有限だお。人は生き方は選べない。
 /        \
/    ─   ─ ヽ       その時その時で、できることなんて限られてる。
|    (●)  (●) |
\  ∩(__人/777/        人は自由だなんて、真っ赤な嘘だ。
/  (丶_//// \

1159 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:42:39 ID:3ClCV4gc0 [20/24]

        ____
      /      \
     / ─    ─ \     けど……なんの為に生きるかは、自分で決められる。
   /   (●)  (●)  \
   |      (__人__)     |    それだけは、全ての人が生まれ持った、たった一つの権利なんだと思う。
    \    ` ⌒´    ,/
    /⌒ヽ   ー‐    ィヽ      命の理由は……自分で決められるんだって。
   /      ,⊆ニ_ヽ、  |
  /    / r─--⊃、  |      だから。
  | ヽ,.イ   `二ニニうヽ. |





        ____
       /⌒  ⌒\
     / (⌒) (⌒)\       やる夫は……戦うよ。君と同じ夜明けを見るために。
    /  ::⌒(__人__)⌒::: \
    |       |::::::|   ,---、     君の傍にいられる明日のために。
    \       `ー'   しE |
    /           l、E ノ       これが、やる夫の答えだお。
  /            | |
  (   丶- 、       ヽ_/
   `ー、_ノ

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
進むべき道は見えている。
そして、共に歩んでくれる人の姿も。

「悩んだとき、君の顔が浮かんだんだ。
君に笑っていてほしいって、そう思えた。
この気持ちだけが……やる夫の中の、たった一つの確かなものだお」

心の内の暗闇を照らす篝火のように、彼女が映る。
それだけで十分だった。人などそんなものなのだ。
大切に思える相手がいて、それだけで人は戦えるのだ。
正義も理想も必要ない。

たとえ自分が、銃を取ることでしか戦うことも守ることもできないとしても。
その先に彼女と一緒にいられる未来があるのなら、構わない。
死後に地獄に落ちようとも、何の悔いもない。
神に悪と断じられようと、決して譲れないものがある。

それだけが、やる夫の誇りであり、理由であり、意志だった。
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1160 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:42:59 ID:3ClCV4gc0 [21/24]

                    ゞ-ゞニノノヌ 、
                 , <  ゞ::::::::::::::::ヌ  丶、
               /      ゞ:::::::::::::ヌ   丶
                , '       /  ゞ:::::::::ヌ    ' ,
             /  ,'  /  // / 〉-、::/ニュ    ',
             { i i  / / / / |:ト、V/ |:|    i
             '、、, / メ≧z、//|:l 只、 j:l    |
              丶}//ィ{ノチア //>'ニ∧ニ;′   i
              ノ   ゛¨´ // ノ i:||:i i     i      後悔、しない?
             ∧     ,, // イ' .|:||:| |   i i
             /   ,、    //' ,′/ |:||:| i   i i       「するもんか。それに……
            /  /,∧     </ / |」|」 | i i i
           i /  / ,个 ー ュ _/ /,ィーー 、 | i i |        折角男に生まれたんだ。
          i/  / / ノ 仁ミ,√/ //.:::::::::::..丶| | i |
          ,,,, ..' / / ノl:l´只.,'  '/.::::::::::::::::::..\ i i |        命を張るなら、大切な子のためがいい」
         ミ)))i   {/ 〉ニヘ{  ノ.::::::::::::::::::::::::::..\ i |
      __ 、//  ',  r,{  //7|:i ; :::::::::::::::::::::::::::::::::..丶 |
    /ヽヽ_V 7  丶i⌒`|:」-'|::', i ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..丶
    ,'ノλ{┘//   /{   薔 7 ソi :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: }
   }   '-´ノ   { :::::丶 丶 i / ゞ ::::::::::::::/::::::::丶::::ノ

1161 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:43:12 ID:3ClCV4gc0 [22/24]

       /     /                    ヽ
     /     /..、   ヾ  〃              i
     i    ノ{:;:;:;:}    ii  〃             i
     i   ゙´ { ゞ'"    ツ   /            i       生きよう、二人で。
    /`     ゝ    ´    /            /
    i       ヽ       /           /
    i        }       三         ,../
      \____ノ       "____   イへ





                    /:/..ィ::(_)='´   /      ート=廴ヾミr)ヾミ;、 ::::',
                   ィ彡》o(ト=''´ i    ,′         ̄廴ヾミ;、ヾミ:Ⅶ
                  巛/::ハ ̄   1    ,             廴入 }::} ||
                  Y::/}::}      |    i ,′                `Yハ⊥⊥
                   /::/! }::!      !  | | ,′             `ーム>トト、
                   ムチ廾:::!      |  1 .|:l                /:/!::八!
                  ノ//:/i¨    i  ト、 | !:!        ,          /:/.ノ::{=彳
                j// !:j i    | 从_ヽ!八|         /  ,ィ     {:ム,':::ハ
                  〃,′.// : |    ィ示圷ミト,..ハ     /! / 1     ¨7:://ム
                    ,′ Li  !   1 弋ヾ ツミ ヽ   / ̄レム、!       ./::/ Li !
                    ,′  i   !   i   ̄`    ヽ/ ,,ィチ示ミ、j      {::/!::イ !
                    ,′  |   ! i、 |             弋ヾツ, / ,′  .L! L!  |
              ,′  .:|   i |ハj       ,       ̄,イ/ /  ,′     1       ……ええ。
              ,′  .:::|   l | ハ   、            .///  .,′     1
              ,′  ..::::::|   l |  .ム   ` - -     ./,イ    ,′      .|        どこまででも。
              ,′ ..:::::::: |   l | {::::::\         ,/ .,′  .,′      .|
              ,′ ..:::::::::::: |   l | /:::::::::::::\_ . -_.≦:::/ .,′  .,′         |
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1162 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:43:33 ID:3ClCV4gc0 [23/24]
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                               ・

1163 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2019/06/18(火) 00:47:37 ID:3ClCV4gc0 [24/24]

         ,- ‐‐ - 、
       r‐イ: : : : : : : : :`,
      i /○ ○: : : : /   /` 、
       i_ _ _ : : : : : : :{    / : : /      以上だ。次はいつになるやら……今日も日付が変わるまで仕事だからね。
       `,_ _`=-: : : :|   ノ : : /
       i: : : : :_: : : : :'y´ : : : /        その分生活そのものは安定するから、背に腹は代えられないのよ。
       `-‐、´: : : : : : : : : /
            ノ : : : : : : : : i´           ああ、予告すると言ったね。あれは嘘だ。ウワァァァァ
          / : : : : : : : : : :|
           i: : : : : : : : : : : !            ごめん、書きあがったもんだし、待たせるのも何かと思って投下してしまった。
.          (`ー‐-  -‐ _}





       , -‐   ‐- 、
     /: : : : : : : : : : ::',
    , ': : : : : : : : : : : : : : :',
  /: : : : : : : : : : : : : : :○:',        ちなみに、やる夫君はルートごとに自分の戦いに対して全く違う答えを出す。
  ヽ : : : : : : ○: : : : : : : : :',
 .  `ト : : : : : : : : : : : _,-‐'`iヽ _      そこらへんも注目して見てくれるとボクもとってもハッピーうれぴー。
    i: 丶: : : : : :,-‐'´__,-‐'´: : : `ヽ
    | : : :ト: : : : `-‐´ : : : : : : 、: : : 丶    それじゃ、シーユーアゲイン。
    | : : :'、j`-‐ : : : : : : : : : : : \: : : ヽ
    丶,,:_:_:_: : : : : : : : : : : : : : : : | : : : i    祝え! 新たなるカップルの誕生を!
          `ヽ: : : : : : : : : : : : `ー‐'
             ヽ: : : : : : : : : : : : : ヽ

1164 名前:安価のやる夫だお[sage] 投稿日:2019/06/18(火) 00:49:48 ID:8kFE7a9o0
乙でした

1165 名前:安価のやる夫だお[sage] 投稿日:2019/06/18(火) 08:08:10 ID:Xwg3KAcQ0
あんまり出なかったけど、リエラは元気にしてんのかな…

IGIO所属だし、ろくなことになってなさそうだけど

1166 名前:安価のやる夫だお[sage] 投稿日:2019/06/18(火) 12:18:45 ID:cNXWldd.0
おつおつ
とりあえず今は見守っていきたい



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